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vol.425
<プジョー308CC試乗記>
2009年10月15日 16:07|試乗レポート
今年6月に日本市場に導入されたばかりのプジョーのオープンモデル“308CC”に試乗した。電動メタルトップを纏い、オープンの爽快感と実用性を両立しているとの評判で、個人的に試乗することを待ちわびていたモデルである。今回、幸運にもプジョー札幌南から試乗車をお借りすることができた為、秋晴れの下、思い切りオープンドライブを楽しんだ。
国道36号線沿いに建つディーラーを出発し、爽やかな風が吹き抜ける豊平川沿いを南下、お洒落なカフェが立ち並ぶ藻岩山北斜面を駆け上がり、駐車場で一服した後折り返す、約40分間の試乗コースをドライブした。爽やかなオープンモデルには車の限界性能を試すようなワインディングや高速路は不似合いと考え、コースにはあえて組み入れなかった。
プジョーと聞いて車好きの多くが真っ先に頭に浮かべるモデルは、なんといっても”205”だろう。1986年の日本導入と同時に人気になった小型ハッチバック車である。“205”は輸入台数では同クラスのVWゴルフに及ばなかったものの、大きなグラスエリアと前後オーバーハングを切り詰めたキュートなルックスで、プジョーの洒落たイメージを確立する立役者となった。今回試乗した“308”は“205”がより大型に、よりエレガントに進化したモデルである。中でも“CC”はコンバーチブルクーペの略号で、遊び心を大切にするフランス人が本腰を入れて開発した電動メタルトップ付きオープンモデルのことである。
実車を受取ると、流麗で伸びやかなボディラインに驚かされる。大きく傾斜したフロントウィンドゥとスラントしたノーズが印象的である。“308CC”はキャビンが大きく開口する4座オープンモデルである。このため、オープン時には約4.5メートルの全長が優美な雰囲気を醸し出す。「キュートな子猫」といわれ、もてはやされたかつてのプジョーのイメージは今やどこにもない。最新型の“308CC”は大人に似合うエレガントなクーペに成長を遂げている。その佇まいは、パリの石畳よりも南仏あたりの地中海リゾートに良く似合うようになった。ドライバーズシートに着座してみると、やはりこの車がデザイン優先でつくられていることを実感する。フロントウィンドゥの前端がすぐ頭上に迫っているのだ。かつてのフランス車の合理的なパッケージング、すなわち実用性に重きを置いた空間作りに懐かしさを覚える一方で、スタイリング面におけるプジョー社の新しい挑戦によい意味で驚かされた。尚、電動メタルトップを畳んだときの印象は一変することを報告しておく。ボリューム感のあるアンダーボディとコンパクトなキャビンがスポーツカーばりの雰囲気を漂わせる。オープン時とクローズド時のイメージの二面性を楽しめるのも“308CC”オーナーの特権になるだろう。
筆者はオープンモデルの内装について重要な点が二つあると考えている。一つ目はドライビングポジションがオープンの開放感を十分に享受できる設定となっているかどうかである。“308CC”のような分厚いアンダーボディをもつモデルは、えてしてバスタブに沈み込んだようなドライビングポジションになりがちなのだが、プジョー社はドライビングシートの上下調整幅を大きくすることでこの問題を解決している。これによりクローズド時には最も下げたシートポジションでスポーティーな着座感を楽しみ、オープン時には最も上げたシートポジションで開放感を楽しむという使い分けが可能になっている。
二つ目は内装の調度である。人目にさらされるオープンモデルの内装は適度に華美であって欲しいと思う。“308CC”はこの点においても抜かりがない。ホワイトメーター、要所にあしらったクロームリングなど、フランス人は装飾の勘所を本当に良くわきまえている。写真では紹介できないが、上級グレードの“308CC/Griffe”に標準となるインテグラルレザーインテリアでは、より華やかな内装色を選択できるので、予算に余裕のある読者はこちらのモデルを検討してはどうだろうか。またクッションの分厚いシートは、雰囲気だけではなく、望外の乗り心地を提供してくれる。“308CC”では、標準で革張りが奢られるために、ファブリック仕様と比較して表皮に柔らかく包み込まれる感覚が若干薄まるものの、その代わりにオーナーはラグジュアリーな質感とメンテナンス性の高さを手に入れることができる。また、ドライバーシート、パッセンジャーシートの首下から温風が出る仕掛けは、秋冬の快適なオープンドライブを実現してくれるだろう。
電動メタルトップの使い勝手について触れておきたい。写真はオープン時のトランクを写したものである。メタルトップはわずか20秒でトノカバーの上部にコンパクトに収納される。したがってオープン時でもカバー下のトランクスペースを有効に利用することができるのだ。これで荷物をリヤシートに置き去りにすることなく安心して駐車できる。また、短時間の停車ならば屋根を空けたままでという洒落た使い方にも適合する。電動メタルトップの開閉はセンターコンソールで確実に行うことができる。しかし、スイッチにワンタッチ機構はついておらず、オープン作業にはスイッチを押し続けることが要求される。この点は正直いって少々面倒であるのだが、安全確保のコンセプトについてはメーカーの判断を尊重せざるをえない。いずれにせよ、クローズド時の機密性と、降車せずにトップを閉めることができるという利便性が電動メタルトップの最大の利点である。古典的なソフトトップの佇まいにも魅力を感じるが、季節を問わずに気軽に風を感じることのできる電動メタルトップがカーライフの幅を大きく広げてくれることは間違いない。
最後になってしまったが、“308CC”の走りについても触れておきたい。日本に導入される“308CC”には主に内装の違いにより二つのグレードが存在する。搭載されるエンジンはいずれも同一で、1.6リッター直噴エンジンにターボチャージャーを一機装備した最新型のエンジンである。最大パワーは140PSと控えめだが、24.5㎏-mの最大トルクが1400~3500回転の範囲でフラットに発生するため、ボディのオープン化に伴う重量増(クローズドHBボディ比約0.2トン増)は全く苦にならない。息の長いトルク感とシリンダーの摩擦感をオブラートで包みこんだようなまろやかな回転フィーリングは、市場に存在するエンジンの中でも随一の心地よさである。実は、このエンジンはプジョー/シトロエンを統括しているPSAグループとBMWの共同開発によるもので、市場では既にそのスポーティーでバランスのとれた性能が高く評価されている。