ドレカの泉

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vol. 421

新型シロッコ試乗記

2009年08月26日 09:45|試乗レポート

 フォルクスワーゲン(VW)の小型2ドアクーペである新型「シロッコ」に試乗した。イタリア語で「サハラ砂漠から地中海に吹く熱風」とネーミングされたこのモデルは、2008年にドイツ本国でデビュー、今年4月に日本市場に導入されたばかりのニューカマーである。今回、DUO札幌南から試乗車をお借りし、夏の北海道で思う存分に走らせてみた。

 

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初代シロッコは1974年にデビュー。ゴルフⅠとシャシを共有しながらも、ジウジアローによるエッジの効いた全高の低いデザインが人気を博した。小型クーペ市場が十分に成熟しているとはいえない時代に、7年間で約50万台が世界中で販売された。1982年には二代目へのモデルチェンジが実施され、ホイールベースの延長など車体の大型化による居住性の向上が図られた。二代目は1988年にVW製クーペの主力車種としての座をコラードに引き継ぎ、1992年に生産中止となった。二代目シロッコの後を引き継いだコラードは、よりスポーティーな車種として位置づけられ、G60スーパーチャージドエンジン、狭角V6エンジンなど、VWの先端技術を真っ先に具現化するモデルとして成長した。そして今回、VWとしては実に13年ぶりとなる小型クーペの復活である。市場におけるメジャーポジションの獲得を目指して、VWが本気の開発を行ってきたことは想像するに難くない。
 

 実車を前にまず目に飛び込んでくるのが、ワイド&ローなスタイリング。イタリアンクーペさながらの流麗で迫力ある外観は、実直で安心感のあるこれまでのVWのデザインイメージを覆すものである。イタリアの有名カロッツェリアの作品であるとさえ見紛う新型シロッコの挑戦的なスタイリング、デザインしたのはVWデザインチームである。内製デザインでありながらここまでの仕事が成し遂げられた背景には、VWのデザイン統括を務めるウォルター・デ・シルヴァ氏の存在がある。氏は02年までアルファロメオ社に在籍、同社最大のヒット作といわれるアルファ156をデザインしたことで有名である。直線的でアクの強い古典的なアルファデザインに、氏独自の繊細で柔らかなタッチを吹き込み、メーカーの個性を一般ユーザーにも理解しやすい形に昇華させたのが成功要因であったといわれている。氏が新型シロッコについても同様な手腕を発揮したことは容易に想像がつく。安心で骨太なVWのアイデンティティを損なうことなく、これまでにないスポーティーでエレガントなテイストを小さな車体に思う存分詰め込んでいる。クーペとしては異例なまでにルーフを長めにとり、しっかりとしたリアピラーを残すことでVWらしい骨太感を残し、一方で天地が薄いキャビンと左右に張り出したグラマラスなリアフェンダーにより流麗で迫力あるイメージを演出している。

 

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今回試乗したモデルは、日本に導入されている2つのモデルのうち、より排気量の大きい2.0TSIのほうで、2.0リッター直噴エンジンにターボチャージャーを一機装備している。最大パワーは200PSで、24.5㎏の最大トルクをわずか1700回転で発揮するフラットトルク型のエンジンである。1.3トンの車体をスポーティーに走らせるのには十二分なスペックであるといえる。今回の試乗コースは道幅の狭い田舎のワインディングだったため、ハーフスロットルの多用を余儀なくされたのだが、フラットなトルク特性に助けられ、カーブ立ち上がり時に十分なスロットルレスポンスを得ることができた。また、VWの新世代直噴エンジンは、吹け上がりのフィーリングの面で、旧世代のVWエンジンにはない軽やかさを持っている。フラットトルクかつ粒のそろった滑らかな回転感はドライバーを本当に心地よくする。筆者はかつてゴルフⅢGTIを所有していてことがあるのだが、当時のVWエンジンは黙々と仕事をこなすタイプのもので、残念ながらスポーツカー的切れ味や気持ち良さを感じられるものではなかった。それゆえに、新型シロッコのエンジンには、良い意味でこれまでVWに抱いてきた質実剛健なイメージを裏切られることになった。さらに、予想以上に実用燃費が向上していることにも驚いた。メータークラスター内には瞬間燃費がリアルタイムで表示されるのであるが、ワイディングだけの試乗であったにもかかわらず、10.0㎞/L内外の瞬間燃費をほぼキープできたのだ。長距離ドライブであればカタログデータ(15.3㎞/L・10.15モード)を達成することは難しくないだろう。

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 新型シロッコ2.0TSIの変速機である6速DSGについてもふれてみたい。ワイドレンジを確保できる多段変速は、理論的に加速性能と燃費を両立することができる。しかし、それはつながりのスムーズさが確保されていることが前提である。その点、VWのDSGは本当によくできている。他社のクラッチ付きオートマに見受けられるシフトアップ時の息つきは微塵も感じられない。しかも、シフトチェンジに要する時間は、感覚的にはマニュアルの半分以下である。このため、カーブ手前ではブレーキ操作に集中し、シフトダウンをぎりぎりまで遅らせることができる。すばやいシフトダウンにより安定したコーナリングを持続できるため、狭い山道でも余裕で攻め込むことができる。あえてDSGのネガティブな面をあげるとすれば、極低速でアクセルを一気にあおった時に感じるトルク変動くらいのものであろうか。しかし、この点は慣れで解決がつきそうなので大きな問題には感じられない。いずれにせよ、DSGによって、マニュアルのシフトミスやトルコンの変速応答性の低さから開放され、ダイレクトで素早く安全なスポーツドライビングを手に入れることができるのだ。長年に渡りMTに固執してきた筆者ではあるが、時代遅れのプライドを捨てなければならないことに気づかされた。
 

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 今回は時間不足のため、小排気量モデルであるTSI(1.4リッターツインチャージャー)への試乗はできなかったのだが、近いうちにぜひ乗ってみたいと思う。3年(06年、07年、08年)連続でインターナショナルエンジンオブザイヤーを受賞しているこのエンジンは、低速トルクをスーパーチャージャーで補い、高速の伸びをターボチャージャーで発揮するという理論的に完全なメカニズムをもっているからである。車選びの際は、大排気量モデルに目を奪われがちだが、新世代VW車に限っていえば、小排気量モデルも積極的に選択する価値がある。エンジンのダウンサイジングを通じて環境対策に生真面目に向き合っている企業姿勢に共感できるからである。

 

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