私が銭湯好きであることはこちらでもたびたび公言していますが、縁あって自分の趣味を他人に押し付ける絶好の機会がやってきました。私が運営スタッフを務めている「札幌オオドオリ大学」で、銭湯をテーマとした授業をコーディネートするチャンスに恵まれたのであります。時は7月のある週末、気温がぐんぐん上がった夏らしい昼下がり。場所は北円山にある銭湯「さつき湯」。50年以上続く老舗であります。外観撮り忘れましてすみません。
今回の授業をお願いしたのが塚田敏信さん。銭湯をはじめとするまち文化に造詣が深く、北海道新聞社より『いらっしゃい北の銭湯』という銭湯好きにはたまらない本も上梓されている。
手前の方が「さつき湯」のご主人、橋本昭夫さん。先代の父上に続く二代目、現在は三人の娘さんのうち一番下の娘さんが店を手伝ってくれているという。ちなみに一番上の娘さんはファッションデザイナーとしてフランスで長く活躍され、先頃帰国されてファッションブランドをプロデュースされているという。そしてご本人も「ほんとは私ね、風呂屋じゃなくて新聞記者になりたかったんです」とおっしゃるとおり、新聞や業界紙に掲載されたコラムやエッセイなどを見せてくださった。いやはや銭湯に人あり、人に歴史あり、なのだ。
授業は開店前の時間を利用して行うため、無人の浴場内を撮影させていただくことができた。
「さつき湯」は先代が銭湯をオープンしたのが五月だったので「皐月=さつき湯」と名付けたのだそう。現在は中央の大きい浴槽とジャグジー(っていうのかな)、水風呂、サウナ、シャワーといった平均的な浴場だ。
というわけで、授業が始まった。教室は男湯の脱衣所。女性にしてみれば入る機会などないから大いに盛り上がりました。いや、女湯と変わらないんですけどね。気分的にね、ウハウハって気分になるじゃないですか。
塚田先生は銭湯グッズのコレクターでもあり、おなじみのケロヨン桶やブリキの看板、のれんなどなどをご持参くださり、さまざまな特徴や違いの見分け方なども伝授してくださった。ちょっとここには書ききれないほど中身の濃い、そしてとてつもなく面白い授業で、あっという間に開店時間を迎えてしまった。
授業のあとは一般のお客さまとともに入浴。参加学生さんもスタッフもハダカの付き合いですっかり仲良くなり、おしゃべりがはずんだついでに「お風呂上がりに円山のお祭りにに行こうよ」なんて話がまとまるほど、あっという間に打ち解けてしまった。
そんな中に入ってきた常連らしきおばあちゃんが
「こんなに混んでるなんて、いったい何があったの?」
と目を丸くしていたが、事情を説明すると
「若い人がたくさん来てくれるのっていいわねぇ。昔の銭湯はこんなんだったもの」
とおっしゃってくださった。
そうなのだ。銭湯は庶民の大切な社交場なのだ。大人はアカもストレスも洗い流しつつ、知った顔も知らない顔もひとときの交流を楽しみ、子どもはまわりに迷惑をかけない入浴マナーを身につけ、礼節を学ぶ。昨今のスーパー銭湯にはない豊かさに満ちた時間がそこにある。
現在札幌に残っている銭湯は74軒。しかし時代の流れのなか、毎年数軒ずつ町から消えていくという。日本古来の文化であり、まちの交流の場である銭湯を、できるかぎり残していきたいと心から思う。
最後に、橋本さんがボイラー室を案内してくれた。
燃料は、札幌中央卸売市場のコンテナに野菜を積みこむ際に使用する木枠の廃材を再利用。
この火が永きにわたって燃え続けてくれることを願っています。
夏です。さっぱりと汗を流しに銭湯へ行ってみませんか。
● さつき湯
札幌市中央区北5条西24丁目3-11
011-631-5788
● 札幌オオドオリ大学
http://odori.univnet.jp/
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