201*昭和の声が聞こえるよ2

2011年04月25日 13:48|クルマ食べあるき

 なんですか、東日本大震災の影響で中古車の需要が高まっているそうですね。平均価格も10~15万円ほどアップしているとか。そんなことも手伝ってか「クルマ買いたい病」がひと段落している私です。
 閑話休題。
 で、「純喫茶 声」です。ケーシー高峰似のマスターがカウンターへひっこんだので、店内を観察してみる。
 店の中央に造花が飾り付けられ、その周囲にボックス席が配置してある、典型的な昭和の喫茶店。だが照明が白色灯のため、思いのほかしらじらとした雰囲気。

1_31.jpg

 しかしよく見ると壁には昔オバアちゃんの家にあった押し絵の額があり、何やら標語が書かれた達磨の絵があり、なぜかヒンズー語で書かれたインドのカレンダーがあり、誰だかわからぬサインがあり、ほとんどカオス。
 カウンターの中ではケーシー高峰がトントンと包丁の音を立てながらタマネギを刻んでいる。やがて油の匂いがしてきて、ジューッと威勢のいい音が聞こえてきた。見るとケーシー高峰は、大きなビニール袋に入ったゆで麺をワサッとつかんではフライパンに入れ、つかんで入れ……しているのだった。
 いやまあそうだと思いましたよ。ここでは「パスタ」ではなく「スパゲティー」。その場で乾麺を茹でるのではなく、あらかじめボイルされたフニャ麺を炒めるスタイルで当たり前。なぜかそう納得するのが「声」の威力。6人分のスパゲティーを炒めるのはひとつのフライパンでは無理だったらしく、ケーシー高峰は巨体を揺らしながらふたつのフライパンを交互に振り、調理にいそしむのだった。
 ほどなく
 「ハイおまちどおさま」
と次々に皿が運ばれてきた。

2_31.jpg

 楕円形のステンレスの皿に盛られたスパゲティーはやや少なめ、添えられたスプーンにはきちんと紙ナプキンが巻き付けられている。ではでは、いただきましょうか。
 ナポリタンほど甘くはなく、ウスターソースでも入っているのか、ほんのりスパイシー。麺はぐったりと茹でられ炒めあげられた太めタイプ、具はタマネギとイリタマゴと、えーと、ピーマンがちょっぴり。なんというか、むかし家で休日のお昼に母親が作ってくれたような懐かしい味。
 そうして食べはじめて私たちは気づいたのだった。
 「私の、具ほとんど入ってない」
 「私の、タマネギ多い」
 「私の、タマゴばっかり」
 そう、ふたつのフライパンで6人分のスパゲティーを作っていたケーシー高峰、盛り付ける際に具と麺のバランスを考える余裕がなかったらしいのだ。ちなみに私の皿はタマネギとタマゴが大半を占めており、麺はほとんど入っていなかった。
 顔を見合わせ苦笑いする私たち。するとなんというタイミングだろう、気がつくとテレビが消えており、代わりに有線のカラオケが「パヤッパパヤッパラッパー」と流れはじめた。その曲は『3年目の浮気』。♪3年目の浮気ぐらい大目に見ろよ……♪なんて思わず口ずさんでしまう私たち。こうなるとそもそもがネタへの期待も込めて入店しているわけなので、もはや笑うしかないのだった。特製スパゲティー、コーヒー付きで700円。ほかにもミートソースやカレーライス、ラーメン、チャーハンといった昭和喫茶の王道はもとより、ジャンバラヤなんて意外なエスニックメニューもございます。
 後日インターネットで調べてみたところ、「純喫茶 声」の創業は昭和46年。もともとはその名に違わず歌声喫茶だったという噂もあり、有線カラオケはその矜持であったということか。猪狩和子さんという名物ママさんがおられるらしいのだが当日はいらっしゃらず、カウンターにケーシー高峰と女性のツーショット写真が飾られていた。もしかしてママさんの体調が思わしくなく、夫のケーシー高峰がたまたま店番をしていたのであろうか。ともあれ、こういう店が札幌都心に生き残っているというのはある種の奇跡だ。つい最近も「声」で人気若手俳優が出演する映画のロケが行われたと聞いている。年配の方には懐かしく、若い人にはレトロで新鮮。こういう店には末永く頑張ってほしいと思う。できればスパゲティーの具と麺はバランスよくお願いします。

● 純喫茶 声
札幌市中央区南1条西9丁目10-1
 011-231-1329
8:00~18:00(土曜日は~17:00) 日曜定休
駐車場はありません。

佐々木美和

佐々木美和

札幌在住のコピーライター。運転免許はもちろんゴールド(ただしタイヤ交換すらできません)。近ごろクルマとは週末のお買い物や旅先のレンタカー、助手席もしくは後部座席でライトなおつきあい。ですが、クルマのお出かけは大好きです。

お問い合わせ