170*涼を求めて

2010年08月31日 18:45|クルマであるく

 いやー暑い。暑いですね。残暑で34℃っていったい。北海道の場合、エアコンはなくても扇風機でやり過ごすお宅が多かっただろうと思いますが、じつは私の自宅兼仕事場には扇風機すらありませんでした。いや正確にはありました、クリップ型のミニ扇風機が。ところが経年劣化のせいか、今夏使い始めて数回目、クリップ部分がぽきりと折れてしまったのです。しかたがないから机の前にごろりと寝かせ、風が顔に向くようあれこれ試みたのですが、スイッチを入れると自分の風圧で勝手にごろごろ転がっていってしまう。遠ざかっていく扇風機を呆然と眺める日々。連日30℃超えが続き、こうしてコラムを書いていても頭がぼんやりして思考能力が低下の一途を辿る8月のある日、わたくし考えました。確かにいまは暑いがそろそろお盆だ。お盆が過ぎれば秋風が吹くのが北海道の常ではないか。しかしどうにも暑くて仕事も手につかぬ。お盆過ぎよりいまを生きることのほうが大事じゃないか。いやお盆までしばしのガマンだ、あと数日の辛抱だ。いやしかし……せめぎあうふたつの心。しかししかし、ついに耐えかねてよろよろとビッ◯カメラへ赴いた私なのでした。いま買ってすぐ涼しくなっても来年も使えばいいじゃないか、腐るもんじゃなし。
 意気揚々とビッ◯カメラの家電売場へ足を踏み入れ、私は驚愕した。扇風機、すべて売り切れ。がらんとした扇風機コーナーにかろうじて残っているのは5,000円、10,000円とお高い扇風機ばかり。「暑いったってどうせ数日間しか使わないんだもん、安いので十分!」という消費者の声が聞こえてくるようだ。そんな市井の消費者のひとりとして、わたくし電器店やホームセンターをハシゴいたしました。ヨド◯シカメラ、ヤ◯ダ電機。ホー◯ック、ビ◯ホーム。しかしことごとく同じ状況。中には扇風機コーナーに「お買得¥3,980」と値札が下がった扇風機の箱が山積みしてあるので喜々として近づいたら、ハロゲンヒーター(扇風機型の電気ストーブ)だったということもあった。それって拷問じゃないですか。高齢者とかが間違って買っちゃったらどうするんですか。それはそうと茫然自失。どうする私。しかしこのまま蒸し風呂の部屋へ帰るのはしのびない。せめてひとときの涼を、と向かったのはモエレ沼公園。

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 木陰に入るとさわやかな風が吹いてきて、暑さに殺気立ったココロが凪いでくる。ふぅ~~~。
 ガラスのピラミッドはこの季節は中へ入ると温室状態なので、外から眺めるにとどめる。

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 東区最高峰、モエレ山にも登ってみた。標高62メートル。空が広い。

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 頂上は風が吹いていて心地よい。しばし扇風機のない部屋のことを忘れていると、ふたりの子どもを連れたお父さんがふうふう言いながら登ってきた。ひとりの手を引き、ひとりをおんぶしたお父さん、頂上に着いたとたん
「ああ………もう帰りたい………」
とひとりごちた。このつぶやきがね、もうなんとも悲壮感いっぱいで。夏休みの子どもの相手をお母さんから仰せつかり、公園に連れてきたら「あっち行こ~」「この山登ろ~」「もう歩けな~い」「おとうさんおんぶ~」となったのであろうと推察する。こっちはむしろ「ああ帰りたくない」なんだけど、お互いたいへんな夏ですね、お父さん。同情のまなざしを向けると、お父さんは頂上でへたりこんだまま、眼下の風景を見おろす気力も残っていないのだった。
 下山すると、ちょうど噴水ショーがはじまった。

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 はー、これぞひとときの涼。かかるしぶきさえもうれしいニッポンの夏、猛暑の夏。
 で、結局扇風機問題はどうなったのかというと、ネット通販「amazon.com」でお手頃価格の品を買うことができました。もっとも私が「買う」をクリックした瞬間「売り切れ」の赤い文字が表示されましたから、まさに間一髪だったわけ。危なかった。
 お盆もとうに過ぎて来週から9月。しかし依然として扇風機はバリバリ活躍中。噴水で涼をとるのもよいが、やはり物理的な冷風にはかなわない。ああ、買ってよかった扇風機。あのとき買っていなければ今ごろ死んでいたかもしれない。ありがとう、ありがとう、扇風機。

佐々木美和

佐々木美和

札幌在住のコピーライター。運転免許はもちろんゴールド(ただしタイヤ交換すらできません)。近ごろクルマとは週末のお買い物や旅先のレンタカー、助手席もしくは後部座席でライトなおつきあい。ですが、クルマのお出かけは大好きです。

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