いまや札幌のメインエリアは「サツエキ」となっているが、JRタワーができる以前、札幌の中心といえば大通だった。今風にいうと「ドーリ」、三越・4プラ・パルコ・日の出ビルに囲まれたスクランブル交差点を中心とするエリアです。
私は地下鉄東西線「西11丁目」界隈で生まれ育った都会っ子だったが、かつては大人も子供も大通界隈のことを「マチ」と呼んでいた。「マチに行こう」=「ちょっとオシャレして買い物に行こう」という意味だった。そう、「マチ」という響きには、どこか非日常のワクワクが潜んでいたものだった。
「サツエキ」登場以来、買い物客もビジネスの中心も札幌駅界隈へ流れ、「マチ」は少々苦戦しているといわれる。ところがどっこい、「マチ」はまだまだ健在だったのです。
連日の暑さがひと段落してやや雨模様の週末、大通界隈で「四番街まつり」が開催された。ご存じの方も多いと思うが、スクランブル交差点を中心に大通~ススキノの駅前通りを歩行者天国にして、おなじみの露店に大道芸、コンサート、アマチュアプロレス、パフォーマンス、バナナの叩き売りなどなど、いろんなものが入り乱れて札幌の短い夏を謳歌するイベントであります。今回わたくし、自ら授業コーディネーターを務める「札幌オオドオリ大学」の授業の一環で、御神輿を担ぐことになったのであります。前回は乙女の花園でセーラ服だったのに、今回は地下足袋に祭り袢天。私はいったいどこへ行こうとしているのか。
ま、ともかく。御神輿を担ぐ機会なんてめったにないので、参加学生のみなさんといっしょに行ってまいりました。講師として御神輿の担ぎ方をレクチャーしてくださったのは、札幌四番街祭好會の副頭・松田尚実さん。粋でいなせなお方です。
御神輿はいわば小さな神社。ふだんお社の中にいらっしゃる神様に地域のようすを見ていただくために、御神輿に乗っていただいて外にお連れするためのものだそうな。四番街の御神輿は商店街のものであって神社のものではないのだけれど、お祭りのときには伊夜比古神社の神主さんがきちんとお祓いをしてくれる。
立派ですね。
鳳凰がはばたいていたり
よーく見ると翁と媼の細かい細工なども施してある。
下世話な話ですが、この御神輿だけで土地付き一戸建てが買えるくらいの価値があるそうな。「それだけたくさんの職人の手が加わっているということです」と松田さん。
衣装のレクチャーもしていただいた。
鯉口(シャツ)に股引きがベースのスタイル。腹掛けには「どんぶり」と呼ばれる大きなポケットがついている。江戸の商店の人々はどんぶりに小銭をたくさん入れておき、客に釣り銭を渡すときにどんぶりから適当に小銭をつかみだして渡していた。それが「どんぶり勘定」の語源になったのだそうな。へえー。
この上に袢天を羽織って帯を締め、頭に手ぬぐいを締めれば祭りの正装が完成。ただしこの日は松田さん、股引きをはいておられなかった(左)。
これは「締め込み」といわれる軽装で、袢天の下はふんどし一丁、お尻丸出し。これぞ漢(おとこ)。いやあイマドキの草食男子に見せてやりたいね。これを読んでる男性のみなさん、衆目の前で尻を出す勇気はありますか。
ともあれ、女の私は尻を出すわけにはいかないので正装で。
背中には「街」の字もりりしく。
四番街まつりはまさに「マチ」のまつりなのだ。衣装も決まったところでいよいよ本番。オオドオリ大学授業コーディネーターのドュヴィーニュ仁央ちゃんと呑気にピース。
このあと御神輿の恐ろしい洗礼を受けることになろうとは……このときは知るよしもなかったのだった。次回へつづきます。
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