初夏らしい暑さが続く札幌。なのに悲しいかな、流行りの風邪をひいたり仕事に追われたりで、ちっとも出かけられずにいる私です。
去る週末は札幌オオドオリ大学へ。私も授業コーディネーターとしてお手伝いをしてまいりました。
オオドオリ大学については、以前このコラムでも取り上げたことがあります。街をキャンパスに、市民を先生に、さまざまなテーマを楽しく学ぶ、市民のための生涯学習ネットワーク。ウェブサイトから学生登録すると、毎月第2土曜日に開講している授業に申し込みことができます。
今回私が担当した授業は「たった1枚のサッポロ」。こどもごころ製作所(東京)とのコラボレーションによる授業で、教室は札幌中央図書館3Fの講堂。
講堂は、ちょうど小学校の体育館をコンパクトにした感じ。窓をあけると気持ちよい風が吹き抜けて、眼下を電車が通っていくロケーション。そういえば中央図書館も以前にこのコラムで取り上げたことがありましたっけ。でも3Fにこんな場所があるとは知りませんでした。
「たった1枚のサッポロ」に参加する学生には、授業の前に100枚の写真を撮る宿題が出されました。この100枚を収めたデジタルカメラを持参して授業がスタート。学生がそれぞれ撮ってきた100枚は、学生自身の手でまず50枚を削除させられます。
そのあとどうなるかというと、残った50枚を10枚に、そして最後の1枚に絞り込んでいく。この最後の1枚が、その人にとっての「たった1枚のサッポロ」となるわけです。
こどもごころ製作所がこの授業を企画したのには、理由がある。かつて当たり前だったフィルムカメラの場合、シャッターを切ってしまえば後戻りはできないという緊張感があった。撮るほうも撮られるほうも、一瞬に賭ける気分があった。それがデジカメにとって代わった今、失敗しても何度でも撮り直せる。都合が悪い写真は削除してしまえばなかったことになる。だからこそ、撮った写真を自分の手で削除する作業を通して、一瞬を切り取る重みを改めて実感してほしかったのだと、いう。
学生いわく、100枚から50枚に減らすのはさして難しくなく、大変なのは10枚に絞り込むほうだったという。私は写真の趣味はないが、なるほど、なんとなくわかる気がする。
授業の後半では、絞り込んだ10枚をプロジェクターで公開。どんな気持ちで撮ったか、その風景にはどんな思いが込められているのか、1枚ずつ説明していくうちに、次第にその人の個性やライフスタイル、嗜好が丸裸にされていく。つまり、この授業に参加した学生は、ファインダーを通して札幌の街と対話し、それを絞り込んでいく作業を通して自分自身と対話していくわけだ。
たまたま同じ場所で撮っても被写体に選ぶものがまったく別だったり、みんなが知っているおなじみの風景の中に思わぬショットが浮かび上がったり、最後の1枚を選ぶ際にも「え! それを選ぶの?」と驚いたり、玄人はだしの仕上がりに感心したり、観ているだけでもじつに面白い。
写真には、シャッターを切った本人が映ることはない。けれど写真には、その人がありありと映し出されている。だから写真は面白いし、ちょっと怖いとも思う。最後に残った「たった1枚のサッポロ」は、きっとその人にとって「たったひとりの自分」でもあるんだと思う。予定時間を超過して3時間半という長い授業だったけれど、学生のみなさんは満ち足りた、とてもいい顔をしていたのが印象的だった。
デジカメに慣れてしまうと撮りっぱなし、貯め込みっぱなしにすることも少なくないけれど、たまにはあえて削除していくことで、ほんとうに大好きな風景、大事にしたい自分に気づくのもいいものだな、と思いました。さて、あなたならどんな100枚を撮り、どんな1枚を残すのでしょうか?
● 札幌オオドオリ大学
http://odori.univnet.jp/
今後もユニークな授業をたくさん予定しています。どうぞお気軽に学生登録を!
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