美唄といえば、ここ数年ですっかり有名になった焼き鳥。レバーやハツなど鶏のさまざまな部位を竹串に刺して焼いたモツ串ですね。前回のとりめしと塩ラーメンをいっしょに食したデザイナー氏は美唄焼き鳥がことのほかお気に入りで、週末になると美唄までやってきて食べ歩くのが趣味だという。えーっ! いまやススキノでも美唄焼き鳥が食べられる店は何軒もあるじゃないですか。
「いや、やっぱり現地で食べるモノは違うんです」
へえー、その違いとは? やっぱりタレとか? 肉質とか?
「串の打ち方が微妙に違うんです(キッパリ)」
とまあかようにニッチなマニアも存在する美唄グルメですが、その名を一躍全国に轟かせたものといえば、やっぱりこれでしょう。
テレビで紹介されてすっかり全国に知られるようになった「角屋のやきそば」。ご存じの方も多いことでしょう。調理せずに袋から直接食べるユニークな焼きそばです。製造元である「かどや」のホームページへ行くと、
「全国で話題騒然!! 奇跡の焼きそば!!!」
と、「!」をふんだんに使用してPRしておられる。
角屋のやきそばが生まれたのは昭和40年代前半のこと。炭鉱の鉱夫は炭じんで顔も手も真っ黒になってしまうため、汚れた手のままでもすぐに食事ができるように、茹でた麺に味付けした焼きそばを袋に入れて販売するようになったという。美唄市内では農協のほか市役所売店などでも販売しているそうだが、遠方からわざわざクルマでやってきて10個、20個とまとめ買いする人も少なくないらしい。最近は札幌でも狸小路5丁目「HUGマート」や地下街オーロラタウン「きたキッチン」などで買うことができます。
ではでは、袋をあけてパクリとやってみましょう。
麺が冷たいおかげで麺が全員カッチリモッチリ身を寄せ合っているため、かぶりつきやすい。歯型がつく麺なんてなかなかありません。味はですね、具の入っていない焼きそばが冷えて固まったものを想像してみてください。やや薄味の甘めのソース味、脂っ気なし。そうです、まさにそんな味です。まあいわゆるB級グルメ的味わいなんですが、不思議となぜかあとをひく。一口、もう一口、同封の紅ショウガのスライスをちょびちょびとかじりながら食べていくうちに、次第に炭鉱マンさながらのワイルドな心持ちになっていき、ワッセワッセと完食。大人になって初めて食べたにもかかわらず、なぜか懐かしい気持ちになってくるのはなぜだろう?
私の大好きな漫画『深夜食堂』(安倍夜郎/小学館)に、料理評論家のくせにバターライス(バターのっけ醤油がけゴハン)が大好きという人物が出てくる。人間どんなにおいしいものを食べつけていても、ちょっと安っぽいくらいのB級な味わいをカラダは忘れないものだ。少々お行儀悪くかぶりつく冷たい焼きそばは、子供のころに立ち食いした縁日の安っぽい焼きそばや、親に内緒で買い食いした駄菓子の記憶を呼び起こす。
だから「角屋のやきそば」は食卓に座って食べるとおいしくない。買ったその場で立ち食いしたり、ドライブ途中やものの合間にせわしなくがっつくのがおいしい。ちなみに私は自宅で「角屋のやきそば」を食べるとき、冷蔵庫から出してそのまま台所で、あるいはベランダから外を眺めながら立ち食いします。
「おいしい」という感覚は、単なる美食にとどまらない奥深いものなのですなあ。「角屋のやきそば」は1個105円。価格も駄菓子感覚で、手軽に昭和へタイムスリップできちゃいます。
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