炭鉱町が多くて哀しい歴史があるせいか、私は長いこと空知地方=地味というイメージを抱いていた。ところがどっこい、近ごろ空知が、というかとりわけ美唄がなんだかアツい。
ある日、取材のためスタッフ4人で砂川へ行くことになった。地方ロケのお楽しみといえばご当地グルメ。さて、オヒルは何を食べましょうかね~?
するとカメラマン氏がきっぱりと言った。
「ボクはね、もう決めてるんです。美唄のとりめしと塩ラーメン!」
え? なにそれ? 聞くと美唄名物だという。へぇー、じゃあ行ってみますか。
というわけで国道12号線沿い『しらかば茶屋』へ。
昭和の気配漂う年季の入った平屋建て。国道に面した壁はベニヤ板で、手書きの看板が取り付けられている。
……だ、だいじょうぶかなあ。
一抹の不安を覚えつつ店内に入り、塩ラーメンととりめしを注文してしばし待つ。
店の奥は広い調理場になっていて、3~4人のおばちゃんたちが黙々と動いているのが見える。その頭上に「調理は心」の4文字が。
ふと背後の小上がりを振り仰ぐと、奥には「味こそ芸術」の掛け軸が。
さらに店内を見渡すと
ほかにも「明るい店に笑顔の泉わく」なんて色紙だの、居酒屋でおなじみ「おやじの十戒」だの、なんだかやたらと標語とか訓戒とかが好きな店みたいなのだ。むむむ……ほんとにだいじょうぶか?
そんな不安をよそに、とりめしと塩ラーメンが到着。いやー、思わず全員「おお!」と声をあげてしまいました。
見よ、このスープ! 摩周湖もかくやというほど、底が透けて見えるほどの透明感。一口すすると化学調味料特有の渋みはおろか雑味がまるでなく、さっぱりとしてまろやかで、じつにうまい。こ、このスープ、かなりハイレベルじゃないですか?
とりめしは醤油味の鶏ガラスープで炊いてあり、鶏の脂もつやつやと、タマネギの甘みと調和してこれまたうまい!
「調理は心」「味こそ芸術」のモットーはダテじゃなかったんですね、だいじょうぶかなんて不安がってごめんなさい。ひと仕事終えて小上がりでまかないゴハンを食べているおばちゃんたちに向かって、心のなかで手を合わせる私なのでした。
それにしてもあのベニヤ板と手書きの看板の店内で、これほどの味がひしめいているとは。ううむ、美唄はあなどれない。
思わぬ美味にすっかり感動しつつ、見るともなしにメニューを見ていると、妙なことに気がついた。
天ぷらそば630円。
月見そば620円。
もりそば630円。
エ? エ??
天ぷらそばともりそばの値段が同じなの?
もりそばより月見が安いの??
いったいどういうカラクリなのか。ううむ、やっぱり美唄はあなどれない。
● しらかば茶屋
美唄市茶志内町日東入口
0126-65−2768
塩ラーメン650円/とりめし500円/塩ラーメン+とりめしセット780円
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