雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス)12/1号で、こんな特集をやっていました。
映画関係者100人が選んだ「泣ける映画」総合ランキング第1位に選ばれたのは、フェリーニの『道』(1954年)。うんまあわからないでもないな。で、第2位は?
クリント・イーストウッド監督・主演『グラン・トリノ』。2008年公開という最近作にもかかわらず、50年以上前の名作『道』に次いで第2位を獲得。しかもジャンル別ランキングでは「人生」部門で堂々の第1位。へぇー。
じつは私、この映画を知らなかった。なぜならクリント・イーストウッドがあまり好きではないから。しかしタイミングとはおもしろいもので、たまたま時期を同じくして札幌市北区のミニシアター「蠍座」で上映中だったので観てくることにした。おうおう、泣ける映画というからには泣かせてもらおうじゃないの、なんてね。
まだ観ていない方もいるだろうから詳しいことは書けないが、ストーリーはこんな感じ。
● ● ● ● ● ●
クリント・イーストウッド扮する頑固な老人・ウォルトはフォードの自動車工をリタイヤ後に妻に先立たれ、テキサスでひとり暮らしをしている。日本などアジアの自動車メーカーの台頭により近隣にはアジアからの移民が増えたが、人種差別主義者のウォルトは彼らとも接触を持とうとしない。
ところが、ひょんなことから隣に住む東南アジア系モン族の少年・タオとの交流が始まる。タオを一人前の男にすることに喜びを見いだし、次第に心をひらいていくウォルト。ウォルトを信頼し、男としての自信をつけていくタオ。しかしそんな彼らを快く思わないアジア系ストリート・ギャングによって、タオ一家とウォルトの人生が一変していく……。
● ● ● ● ● ●
クルマが好きな方ならすでにお気づきと思うが、タイトルのとおりこの映画のカギを握っているのがフォードのヴィンテージ・カー「グラン・トリノ」。無知な私は映画を観るまでそれをクルマの名前と知らず、てっきりイタリアが舞台なのかと思っていました。いやだってトリノなんていうから……ははは。
ウォルトはフォードの自動車工だったプライドがあり、休日にはガレージに大切に保管している「グラン・トリノ」をピカピカに磨きあげ、その美しさにほれぼれと見とれながらビールを飲むのを喜びとしている。ふだん使いで乗り回しているのもフォードのピックアップトラック。とにかくウォルトにとって「クルマといえばフォード!」なのだ。一方、タオを付け狙うアジア系ストリート・ギャングたちがブイブイいわせているのは、ホンダ(車種はわかりませんでした)の羽根をビラビラつけた改造車というのがなんとも皮肉。アメリカ人のクルマに対するホンネってこんな感じなのかなあ。
この「グラン・トリノ」というクルマはどういうクルマなのか。こちらのサイトに写真と説明が載っています。
http://gazoo.com/meishakan/meisha/shousai.asp?R_ID=2220&ex_spec=shousai
フォード・トリノの中でも1972~76年に間に生産されたものを「グラン・トリノ」と呼ぶそうで、映画の中でもウォルトが「1972年製」を強調していたのが印象的だった。たしかにこのボディラインの70年代的美しさ、いかにもガソリンをガンガン食いそうな非エコ的色っぽさ、昨今のカーデザインにはちょっとない。フォードマニアならずとも、目の保養になること請け合いです。そしてクリント・イーストウッドのファンならずとも、この映画はグッとくる。男としてどう生きるか。人間としてどう死ぬか。甘っちょろい感傷は微塵もなく、なのにあまりにもやさしすぎるラストに、私、ポケットティッシュを使い果たすほど号泣してしまった。うう、さすが泣ける映画人生部門No.1。
この映画の見方って、たぶん人によってずいぶん違うのだろうと思う。クルマ好きにとっては「グラン・トリノ」を存分に鑑賞できる楽しさがあるし、アジア系自動車メーカーの台頭に危機感を抱く一方、根強い人種差別や民族文化の相違から来るトラブルを抱え続けるアメリカの現実も見えてくる。そして軽妙でおしゃれなセリフ回しと、クリント・イーストウッドが眉間にシワを寄せつつ垣間見せる、はにかんだやさしさも見どころのひとつ。私などは個人的に、老人ウォルトの頑固っぷり偏屈ぶりに我が父親を重ねてやりきれない気持ちになったりして(これがまた、クリント・イーストウッドの風貌がウチの父親に似ているのだ)……ともあれこれは間違いなしに☆☆☆。年末年始の休日にDVD鑑賞などはいかがでしょう。
![Doreca[ドレカ] 車選びの総合メディア](http://kuruma.hokkaido-np.co.jp/common_img/header/header_logo.gif)









