世間のほとんどの方はご存じないと思うけれど、札幌には「札幌コピーライターズクラブ」、略称「SCC」という団体があります。
SCCには札幌を中心に活動しているコピーライターが所属し、年に一度それぞれの仕事を持ち寄って審査するコピー・アワードをメインに運営を行っており、私もSCCの運営委員の末席を汚しているわけです。役立たずながら。
話は今月初めにさかのぼってしまうけれど、SCCの企画により、コピーライターの岩崎俊一氏によるトークショー&サイン会が札幌市内で開催された。
岩崎俊一氏という人物も、これまた広告に興味がある方以外はあまりご存じないかもしれないけれど、コピーライター業界では超がつくほどの有名人。彼のコピーで有名なものは多々ある。たとえば
「あなたに会えたお礼です。」(サントリー・ギフトCM)
「髪は弱いものと考える。」(資生堂・スーパーマイルドシャンプー)
「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」(資生堂・アクテアハート)
「年賀状は、贈り物だと思う。」(日本郵政グループ)
「さ、世代コータイ。」(au by KDDI )
「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)
などなどなど、誰もがどこかで耳にしたコピーは枚挙に暇がない。
そんな岩崎氏が今回来札したのは、先に上梓した本『幸福を見つめるコピー』のプロモーションとSCC会員との交流を兼ねてであった。そこでイベントに先立ち『幸福を見つめるコピー』を拝読させていただくと、ありましたありました、クルマ関係の有名コピー。その中からひとつ、途中まで引用させていただきます。
「21世紀に、間に合いました。」
あなたが空想したクルマです。
手塚治虫さん。私たちが新しいクルマをつくりました。
21世紀のクルマはどうあるべきか。
その問いへの、トヨタのひとつの答えです。
今まで、クルマは乗る人のものでした。
乗る人の便利、乗る人の安全、
乗る人の楽しみのためのものでした。
これからのクルマは乗らない人のものでもある。
どのクルマの広告か、もうおわかりですよね。さらに後半を引用させていただきます。
電気とガソリンを併用し、燃費を約2倍に、
CO2の排出量を約半分に、NOxなどは規制量の
約10分の1にしたハイブリッドカー「プリウス」には、
そんな願いが流れています。室内をできるだけ広く、
外観をコンパクトにしたパッケージ。ドライバーの見やすさ、
使いやすさを求めたセンターメーターの発想など、
そこには「トヨタが考える未来」がつまっています。
「ガラスのようにこわれやすい地球」
「ぼくは人間がいとおしい。生き物すべてがいとおしい」と語り、
問題を解決するのは、人間の知恵と勇気だと訴えていた手塚さん。
21世紀に間にあいました。
このクルマから、私たちは未来へ向かおうと思います。
プリウスのデビューを飾ったこのコピーが世に出たのは、1997年。9.11、リーマンショック、そして史上初の黒人アメリカ大統領の誕生などなど、21世紀に入ってからの世界の激動などいまだ想像もつかない時代に書かれたハイブリッドカーのコピーは、かくもやさしい。
モータリゼーションの世紀の最後に登場したクルマのコピーが、環境の世紀に向かって呼びかける。時代を予見したプリウスの商品力とコピーの力は、12年の時を経て、ますますリアリティをもって私たちに強く呼びかける。なんてすごいことだろう。
デビュー当時のプリウスは「なんだかよくわかんないけどすごいクルマができた」「でも私ら庶民が乗ったからってどれだけ環境保護になるのかわくわかんない」「第一気軽に買える値段じゃない」という感じで、機能も価格もまだまだ高嶺の花、という印象のクルマだった気がする。それが12年たった今、他社も続々ハイブリッドカー市場に参入し、価格もぐんとお手頃になり、エコカー減税なんてものまで導入され、プリウスは私たちの生活を支えるクルマになっている。「夢のクルマ」どころか、環境の世紀をリアルに体現するクルマになっている。手塚治虫先生も草葉の陰でさぞやびっくりしているだろう。
2009年、日本は民主党政権を選択した。先日アメリカで初の国連演説を披露した鳩山総理は「2020年までにCO2の1990年比25%削減をめざす」と明言して世界の喝采を浴びた。これがほんとうに実現するのかどうか、いまはまだわからない。ただ、プリウスをはじめとするハイブリッドカー市場が、その目標の一角を支えていることは、たぶん間違いない。
プリウスも、コピーも、生まれたときから未来を見つめていた。
2020年、プリウスはどんな進化を遂げているだろう。その進化を語るコトバは、どんなコトバなのだろう。
先行きの見えない時代だけど、なんだかちょっと楽しみになってきませんか。
「幸福を見つめるコピー」岩崎俊一/東急エージェンシー ¥1,995
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