105 *湯けむりが目にしみる

2009年05月11日 10:09|クルマであるく

 『ドラえもん』に登場するのび太のガールフレンド、しずかちゃんは、しばしばお風呂に入っている。そりゃあもう『水戸黄門』の由美かおる並みに入りまくっている。彼女たちが文字通り体現しているように、おしなべて女性はお風呂好きが多い。私も女のはしくれなので、お風呂が好きだ。自宅の風呂で読書をしながら、銭湯でカカトをこすりながら、温泉でオバサンたちの世間話に聞き耳をたてながら、1時間半から2時間ほどかけてゆっくり入るのが好きだ。なんとなくね、長風呂ってたっぷり汗かいて全身くまなくアカをこすり落として、根拠もないのにキレイになれそうな気がするんですわ。効果を実感したことは一度もないですけど。ははは。
 では男性はどうかというと、お風呂好きというよりむしろ「温泉好き」のほうが圧倒的に多いように思う。いかにたくさんの温泉に入ったか、いかに秘湯を知っているか、温泉武勇伝を語る男は少なくない。しかしそのわりに入浴時間はあっさりしているんですな。30分くらいで出てハイ次の温泉へはしご! みたいな。こらこら、ちゃんと耳の裏まで洗っているのかねキミたちは。
 
 ま、それはともかく、友人H氏もこうした温泉好き男。趣味で仕事で家族サービスで、道央~道東をメインにあちこち駆け回るついでに温泉に入りまくっているらしい。そんなH氏に便乗して札幌からクルマで約1時間、やってきました「しんしのつ温泉アイリス」。

 

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 こちらは隣接するゴルフ場のクラブハウスを兼ねているそうで、エントランス横はゴルフ場のフロントになっている。

 

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 「温泉」という和やかな響きに似合わぬ厳しいお言葉が。気をつけましょうね。

 

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 2F温泉受付の券売機で入浴料400円ナリを支払う。私以外のメンバー2名は男性なので、「では1時間後に」とひとり女湯へ。すっぱだかになり、タオルいっちょで浴場へ入る。
 朝11:00というのに浴場内はすでに大混雑。札幌市内のスーパー銭湯などでは子連れママが多いけれど、ここはおバアさん率が異常に高い。孫の背中を洗ってあげている姿がチラホラ見えるのも微笑ましい。
 洗い場のすきまにもぐりこみ、カラダを洗おうと備え付けのボディシャンプーを探す……が、フツーの白い浴用せっけんが置いてあるのみ。え? もしかしてシャンプーとかリンスとか……ない! なんてこった。昔ながらの銭湯はともかく、近ごろはスーパー銭湯にも温泉にもボディシャンプー、シャンプー&リンスが備え付けてあるのが当たり前だと思っていたが、ここは温泉が出る銭湯だったのだった。なんてこった……。
 動揺を隠しつつ、浴用せっけんでカラダを洗いながら目の前に迫った洗髪問題を必死で考える。道は4つだ。

1 洗髪をあきらめる
2 今すぐ浴場を出て服を着て受付にシャンプー&リンスを買いに行く
3 隣のオバサンにめぐんでもらう
4 浴用せっけんで洗髪する

 すでに温泉熱に蒸されて汗みどろの今、1は却下。そして男たちと1時間後に落ち合う約束をした以上、2は時間のロスがもったいない。では3は? 隣で背中を流しっこしている2人のオバサンを見ながらシミュレーション。す、すみません、シャンプーとリンスを少しめぐんでもらえませんか。(※ここからは妄想です)
「ンマー、シャンプーも持たずに温泉に来るなんて非常識な。これだからイマドキの娘は」
「ンマー、見ず知らずの人にシャンプーよこせだなんてズーズーしい。これだからイマドキの娘は」
「アンタどっからきたの? え、札幌? ンマー、これだから都会の人は」
「うちのオトーさんに村議会で言ってもらわないと!」
「こんなワガママを許していては新篠津村の損失が増えるばかりだしッ!」
 ひとりの洗髪問題から新篠津村の信用を失った札幌市。やがて札幌から北海道、そして全国の公衆浴場組合を巻き込んだ論争へ発展し、そのうちドイツや北欧のスパ関係団体を巻き込んだ世界論争へ発展し、混乱に乗じた北朝鮮が暗躍しはじめ、やがて世界は第三次大戦に突入する。うわあああ、それは困る。困るぞ!
 えー、新篠津村のみなさんの名誉のために言っておくが、これはあくまで私の妄想です。たぶんオバサンたちは「あらあら」なんて言いながらめぐんでくれたにちがいないのだ。私だって逆の立場ならきっとそうする。しかし一度暴走しはじめた妄想はもはや止まらない(自らちょっと楽しんでいるフシもある)。せっかくまったりしたくて温泉にきたのに、妄想の暴走で神経が疲弊してへとへとだ。ううう……ええい、もういいッ!
 そして私は卒然として浴用せっけんをアタマにこすりつけ、ごっしごっしと洗髪した。当然リンスなし、指も通らないほどギシギシゴワゴワときしむ髪を振り乱したまま、のっしのっしと露天風呂に向かう私なのだった。もはやアラフォーを通り越してオッサンの行動形態ですな。ハァ……。
 しんしのつ温泉は強塩泉だそうで、やや褐色で海水のようにしょっぱくて、いかにも温まりそうないい湯だ。露天風呂の眼下には神社の鳥居、空にはなにやら大きな鳥が弧を描く。ふと髪に手をやればギシギシ、ゴワゴワ。
 このギシゴワアタマ、乾いたらどんなんなってしまうのか。
 わが身のバカさと情けなさが口惜しく、しょっぱい温泉が目にしみる春だった。

● しんしのつ温泉 アイリス
石狩郡新篠津村第46線南3番地
(0126)58-3371/(0126)57-2341
10:00~21:30(入館は21:00まで)
入浴料: 大人(中学生以上) 400円
    小人(小学生)   200円
    幼児       無料

国道275号線を当別付近で右に、岩見沢方面へ。すぐそばにしのつ湖もある。なんといっても強塩泉のインパクトが強い。ぬるめ・熱めの内風呂にうたせ湯、サウナ、露天風呂もあって入浴のし応えがあります。石けん、シャンプー、リンスを忘れずにね。

 

 

佐々木美和

佐々木美和

札幌在住のコピーライター。運転免許はもちろんゴールド(ただしタイヤ交換すらできません)。近ごろクルマとは週末のお買い物や旅先のレンタカー、助手席もしくは後部座席でライトなおつきあい。ですが、クルマのお出かけは大好きです。

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