雨もやんだ曇天の下、クルマは一路最果ての岬をめざす。道はゆるやかなアップダウンを繰り返し、周囲の景色はなんだかそれまでとは少し違う様相を呈してきた。すなわち、こんもりとした緑の丘が続くだけで、木がないのですね。Nさんいわく「稚内のノシャップ岬のあたりもこんな感じ」とか。そういえば遠く沖縄・宮古島の最東端の岬、東崎(あがりざき)のあたりも草原が続くばかりで木がほとんどなかった記憶がある。岬の風景というのはどこも似たようなものなのか、あるいは風が強すぎて木が育たないのか。
そうこうするうちに到着しました、襟裳岬。「なにも~ない~春です~♪」と歌われていたからどれほど閑散としているか、と想像していたのだが、あいにくの天気だというのに家族連れやカップル、オートバイの大連隊、台湾からとおぼしきツアー客、呼び込みにかまびすしい土産物店などなどなど、やけに大勢の人で活気あふれる襟裳の夏なのだった。
ついに来ました、ここが襟裳岬。北海道のしっぽ。
下をのぞきこんでみると、ひぇっ、ここから落ちたらひとたまりもありませんな。
一応観光地のお約束ということで、写真を撮ってみました。
……………………何かこう、「最果てに来た!」という盛り上がり感に欠ける。なぜだろう。そこで思い当たった。風がないじゃないか! 強風で知られる襟裳岬なのに、地元Hさんも「こんな日はめったにない」というほどおだやかな空気が満ちているのだ。あとで知ったがその日の風速は1m以下。おいおい、「なにも~ない~♪」上に風もないってそりゃあ何にもなさすぎですよ。「岬の突風でB’zのモノマネ」どころか、そよとも風は吹きゃしない。運がいいんだか悪いんだかわからんな。
せめて襟裳岬に降り立った証を、と有名な歌碑の前へ。なんでも『襟裳岬』という曲は森進一のほか、同名異曲を島倉千代子が歌っているそうで、なるほど歌碑がふたつ並んでいる。ほほう、ではまず島倉千代子バージョンをパチリ。
続いて森進一バージョンを、と思ったのだが、しっかりと手をつないだカップルが歌碑の前に佇んでいたのでしばし待つ。ところがこのふたり、デンと真ん中に陣取ったままなかなか動かないのだ。歌碑に刻まれた文字をじっくりと読み、見つめあってウフフと笑い、また歌碑に目をやり、ウフフと笑う。こらーッ! そんなに熟読するほどの長文じゃないだろーッ! ウフフっていうような歌詞でもないだろーッ! いちゃいちゃするならよそでやれーッ!
と口に出して言えるわけもなく、先へ行ってしまった仲間に取り残されかけてあえなく退散。わたし負けましたわ。
岬の突端まで降りたあと、「風の館」へ。入場料は大人500円、小人300円。
襟裳岬は日本最大のゼニガタアザラシの生息地で、「風の館」展望ゾーンに設置された望遠鏡でその姿を確認できるという。どれどれ、のぞいてみましょうか。
ぐりぐりとピントを合わせていくと、おおおおおお! いました!! 岩場にごろんごろんと何十頭も転がっている。ときどき腹筋運動してみたり、よたよたと岩場を移動したり、もうかわいいのなんの! なんでも夏は毛替わりの時期で、こうしてひなたぼっこをしている姿が1年で最も多く見られるという。いやー、ぜひみなさんにも見せてあげたかったが携帯カメラでは無理です。残念。
お茶目な風貌のゼニガタアザラシだが、地元では漁場に侵入してきて魚を食べるため、漁民にとっては招かれざる客なのだとか。とはいえ、ある意味こうして観光資源の役割も果たしているわけだしね。人とゼニガタアザラシの共生、うまくいくといいですね。
あちこちに設置された望遠鏡をのぞきながらそぞろ歩いていたメンバーのTさん、どうしてもゼニガタアザラシの姿を確認できないらしく、「ここなら見えるよ」とピントを合わせた望遠鏡を譲られたものの「えー? どこ? どこ?」となおも首を傾げていた。ま、岩場と同じ色をしているので、じっとしていると見つけにくいかもしれません。ころころ丸っこい体型と動きに注目して探してみてね。
ああ今週も長くなってしまった。1ヵ月もひっぱってきた日高紀行、来週こそは完結させますので、いましばらくおつきあいのほどを。
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