まず刑事処分。いつになくビシッと黒いスーツで裁判所へ出向いたカオリさんいわく、通された交通違反者対象の部屋には6つほどブースが並んでおり、それぞれに裁判官がついている。違反者は呼ばれるとひとりずつ所定のブースへ行き、事実確認および説諭・訓戒を拝聴する、らしい。カオリさんと対峙したおじいちゃん裁判官はスーツ姿の彼女と違反内容を見比べて「あなたのような方がなぜこんなことを」とつぶやき「何か言い分はありますか」と訊ねたのだそうだ。カオリさんが「何もありません。罪を償わせていただきます」と神妙に答えたところ、その後のやりとりはいたって和やかに進んだのだそうな。もっとも、酒酔い運転による違反者が対象の別ブースからは穏やかならぬ怒号が響いていたというから、裁判官の個性と違反者の態度が大いに影響しそうですね。ちなみに刑事処分上の罰金は6万円ほどとのこと。うわ、痛いですね。
その後1週間ほどのちに行政処分で、朝もはよから手稲区にある札幌運転免許試験場へ。停止処分者講習は免許停止期間により時間も講習代も下記のように異なる。
●短期(40日未満)・・・6時間¥13,800
●中期(40日以上90日未満)・・・10時間¥23,000
●長期(90日以上)・・・12時間¥27,600
カオリさんは中期にあたるため、23,000円を支払ってテキストを受け取り、他の処分者とともに昼休みをはさんでほぼ終日講習を受ける。その内容をもとに1週間後に学科試験が行われ、点数により免許停止期間が短縮されるわけだ。
「教官がね、『試験は全部で42問出題されます。私は出題される内容はまったく知りませんが』って言いながら『テキストのここに線を引きなさい』って示した数がぴったり42カ所なのよ。やさしいわよね~ガハハ!」
武士の情けに気が緩んだか、早朝から教室にカンヅメで疲れたか、カオリさんは昼食を食べ終えると机につっぷして仮眠をとっていたのだそうな。
「気持ちよく寝てたのに誰かがやたら咳払いをするのよね。うるさいなあ、と思いながらそのまま寝てたら肩を揺さぶられて、ハッと気づくと教官が立っててみんなこっちを見てンのよ! ワッハッハ!」
さすが怖い者知らず。そもそもカオリさんは自動車学校ではなく、公安委員会の運転免許試験を直接受けてストレートで合格したという強者なのだ。聞くところによると、公安委員会の試験の合格率はわずか3%だというから、彼女の敏腕運転ぶりが伺い知れる。停止処分者技能講習で助手席に乗った教官も「せっかく公安で取ったのに、もったいない」としきりに嘆いていたという。ともあれ、運転技能はもとより学科試験も満点で通過、晴れて1カ月間の免停期間に突入したカオリさんなのでした。
「でもね、考えようによっちゃ免許がない生活も悪くないわよ。今までならクルマがあるから仕事帰りに飲みに行くこともできなかったけど、これからは堂々と飲んで帰れるンだもの! うちのオットも私の"おかげで"20年ぶりに運転を再開するチャンスがめぐってきたンだし。人生、たまにはこういうことがあってもいいわよ」
ン十年ぶりに乗ったバスでは料金箱に500円玉を放り込み「お釣りが出てこないのよね~、損した」とか、地下鉄に乗ろうとしてすすきの駅へ歩いたついでに「ススマ(若者語で「すすきのマクドナルド」の略)に潜入してみたわ!」とか、けっこう社会勉強を楽しんでいるようす。あ、カオリさんから携帯メール。
「いま○○で飲んでるんだけど来ない?」
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