パーティーというのは、じつは当社社長の還暦祝い。かつて還暦といえば赤いチャンチャンコに赤い頭巾の好々爺といったイメージでしたが、当社社長は直球ド真ん中の団塊世代、おまけに広告という水ものを相手にしてきて今なお現役のせいか、とても60才には見えない若さ。身内ぼめで恐縮ですが。札幌の広告業界ではそれなりに業績があるおかげか、休日のパーティーというのにじつに100人あまりのゲストが来てくださいました。
当社社長、広告人としては相当な切れ者ですが、じつは一般人として当たり前のことにはちょっと疎い。カードで買い物したこともなければ銀行ATMでお金を引き出したこともなく、下戸ゆえ焼鳥屋に入ったこともない。クルマの免許も一応持ってはいるものの、運転は結婚以来奥様任せで早28年。一度だけ家族旅行で函館へ向かう途中に運転したら、家族全員真っ青になってすぐに奥様に交替したそうな。
片やカウンセラーとして活躍する奥様は、一般人の常識を覆す行動力の人。異常に広いその人脈を駆使して不可能を可能に変え、どこへ行くにもホンダアメリカのアコードワゴンで突っ走り、駐車違反のキップを切られて「アンタのおかげでせっかくのいい1日が台無しよ」と警官に軽くジャブを入れる(ふつうの人は真似しちゃいけません。っていうか、できない)。なんというか、おふたりとも常人の域を超えたところがあり、性格や行動パターンはまるで違うのに絶妙なバランシングの夫婦なのですね。
若いころ詩人を志していた社長は、種田山頭火ばりに放浪しながら詩を書くつもりで北海道にやってきました。1ヵ月ほどえりものユースホステルで犬の散歩をしながら暮らしていたものの、旅の資金が底を尽き、とりあえず札幌の広告制作会社にもぐりこむことに。そのころ奥様と知り合って結婚したわけですが、当時のことにふれながら、パーティーの席上でじつにいい話をしてくれました。
「……それまでのぼくの人生は灰色でした。ひとりで詩を書いてぶらぶらして、たったひとりで死にたいという、じつに自分勝手な、単調な灰色の未来しか見ていませんでした。それがカミサンと会ったことで家族や会社を持つことになり、計画が大幅に狂っちゃったわけです。でもそうなったことで、ぼくの灰色の人生にはいろんな鮮やかな色が加わりました。カミサンがたくさんの友人を家に連れてくることでぼくの交友関係も広がったし、新しい世界に出ていくことを億劫がるぼくの尻を叩いてくれることもあったし、今こうしてたくさんの人が集まってくれる人生を生きていられる。若いころは想像もできなかった人生だけど、これはこれでなかなか幸せな人生だな、と思います」
50代、60代と、この先どんどん老いていく世代になってなお、自分の妻を讃え、幸せだと胸を張れる人生。なんだかじーんとしました。ゲストの中にも涙ぐんでいる人がたくさんいて、この人のもとで仕事できる自分は幸せだなあ、とつくづく思いました。
人生のドライブは、まっすぐ走れば目的地に着くような単純なものではありません。道を間違えたり引き返したり、気がつくと見知らぬところを走っていたり。クルマを運転する社長なんて今さら想像もできないけれど、人生のドライビングは見習いたいな、と思います。
と、無理やりクルマにからめて落としたところで、来週からまたクルマネタを探してがんばります。
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