さて、バイオ燃料。テレビや新聞などで目にしない日はないのでは、と
いうほどの勢いで注目されておりますね。糖質やでんぷんを原料とする
バイオ燃料の排ガスはCO2もSOxもゼロ、すすや黒煙も少な
いので地球温暖化や酸性雨、大気汚染といった環境問題にアプローチで
き、しかも再生して持続的利用が可能。と聞くと、まさに夢のような新
エネルギーじゃないですか。バイオ燃料生産に積極的なブラジルでは、
原料となるサトウキビを増産するべくオレンジ畑をサトウキビに転作。
その結果オレンジ果汁の輸入価格が高騰し、日本でもオレンジジュース
が軒並み値上がりするという事態に発展してしまったわけですが、テレ
ビのニュースでインタビューを受けていた街の人々の表情には複雑なも
のがありました。オレンジジュースを好んで飲む人にとって、ジュース
の値上がりは家計的に困る。だからといって単純に反対をとなえると
「ふぅーん、エコとかロハスとかいわれるこのご時世に環境よりも家計
を優先する人なのね」みたいに知的レベルを疑われるんじゃないかし
ら...というような、ね。
ま、オレンジジュースみたいな嗜好品の値上がりなんてかわいいも
の。聞きかじったところによると、それでもまだまだサトウキビの作付
用地が足りず、アマゾンの森林を伐採してサトウキビ畑に転作している
そうではありませんか。そ、それってむしろ環境破壊そのものじゃない
の? 伐採するための重機だってC02入り排ガスをまき散ら
しているのでは? さらに身近に目を転じれば、北海道内でも
45億円を投じて苫小牧市に米を原料とするバイオ燃料プラントを建設す
るというニュースが報じられたのも記憶に新しい。最初は安価な輸入米
を使用し、ゆくゆくは道産米で...という計画らしいけれど、クルマ
も"米チェン!"ですか? プラント建設に伴う環境負荷も
もちろんですが、発展途上国では穀物を食べられずに飢える子どもたち
がいる傍ら、先進国ではクルマが米を食べてブイブイ走っている...それ
は人間の暮らしとして健全といえるのだろうか。なんだか想像すると、
ちょっと怖くなりました。
私はバリバリのエコロジストでもなければ経済至上主義でもありませ
ん。地球環境も大切だけどクルマの利便も享受したい。サトウキビ畑へ
の転作やプラント建設で利益を受け取る市井の人々がいるのもわかる。
だけどバイオ燃料が抱える矛盾も先進国の人間の手前勝手な論理も気に
なる。かといって問題の是非を明言する洞察力も、具体的な解決策を提
言する知性も持ち合わせていない...という曖昧な状態が現実です。た
だ、「地球にやさしい」という言葉の表面的なイメージに与することな
く、そこにも歴然と存在する市場原理に惑わされることなく、ちゃんと
物事の本質を見つめなければいけないなぁ、と思うんですね。なんとも
中途半端な立ち位置ですけれど。
先日読んだ『家日和』(奥田英朗著・集英社)の一節で、
ロハスライフに熱中するお金持ち一家に対して主人公が「そんなにロハ
スが好きなら、子どもをクルマで送迎しなきゃいけない私立中学なんか
に行かせるな! 公立中学に歩いて通え!」と心の中で毒づ
く場面がありました。思わず爆笑しながら、クルマとエコのかくも悩ま
しき関係に思いをはせたのでありました。
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